| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) J1-10 (Oral presentation)

東京湾の干潟再生戦略:アサリ個体群の遺伝的構造解析を基に

北西滋*(水研セ・瀬戸内水研),川根昌子(奈良女大),風呂田利夫(東邦大),中山聖子(東邦大),大越健嗣(東邦大),浜口昌巳(水研セ・瀬戸内水研)

東京湾では、高度経済成長期に埋め立てなどの海岸開発により、多くの干潟が失われてしまった。それに伴い、干潟に生息するベントス類の減少が危惧されえている。特に、干潟の代表的な生息種であるアサリRuditapes philipinarumの漁獲量は1970年頃の年間6~8万トンをピークに減少を続けており、その資源の保全・再生は急務となっている。一般に、干潟ベントス類のほとんどの種は浮遊幼生期を持ち、浮遊幼生を通じた個体群間の交流が生じていることが知られている。そのため、本種を適切に保全・再生するためには、各個体群間の交流の有無とその程度などの情報が不可欠である。本研究ではマイクロサテライトDNAマーカーを用いて、東京湾におけるアサリ個体群の遺伝的構造を明らかにし、保全遺伝学的観点から、本種のより適切な保護管理策の立案に寄与することを目的とする。解析は、マイクロサテライトDNA6遺伝子座を用い、東京湾の主要生産地を網羅する7個体群(野島公園、羽田、葛西、三番瀬、千葉ポートパーク、小櫃川、富津)545個体を対象に実施した。解析の結果、個体群間の遺伝的分化の程度は非常に小さく(全FST < 0.0066)、距離による隔離の効果も認められなかったことから、全ての個体群間において浮遊幼生を通じた頻繁な遺伝的交流が生じていることが示唆された。


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