| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-006 (Poster presentation)
異なる植物群落間の境界をエッジと呼び、エッジを挟んだ群落が混ざり合ってできた移行帯をエコトーンと呼ぶ。草原と森林の境界におけるエコトーン形成は、境界の光変化が関与している可能性が高い。ただし、草原と森林の境界においては、必ずしもエコトーンが形成されるわけではない(中山2010)。エコトーン形成は、草原から森林に向かう光強度の変化率によって説明できる可能性を示唆している。本研究では「エコトーン形成に必要な環境条件は2つの植物群落間における光強度の緩やかな変化である」という仮説を検証することを目的とする。
調査地は、富士山北西麓に位置する野尻草原(1260 m)である。青木ヶ原樹海に面した場所で、林縁の形状から相対光量子密度の変化が急な場所(Line01)と緩やかな場所(Line02)を選択した。Line01とLine02において、草原と森林の境界を中心とした50 mのトランセクト上に、50 cmごとに0.1 m×1 mのコドラートを設置して植生調査を行った。調査対象は草本種及び樹高1.3 m以下の木本種とし、植物種の出現の有無を記録した。光量子密度は各コドラートで植生の上部で測定した。
Species response curves(Huisman-Olff-Fresco models)を用いて、相対光量子密度に対する各植物種の分布域ポテンシャルを推定した。各トランセクトにおいて相対光量子密度の変化と各植物種の分布域ポテンシャルを照らし合わせることで、各植物種のトランセクト上での分布幅を推定した。
Line02の方が、中程度の光強度における分布域ポテンシャルの重なる分布幅が大きかった。このことは、草原種と森林種の混生できるスペースは広いことを意味し、エコトーン形成に適した環境であると考えられる。本研究は仮説を支持する結果となった。