| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-007 (Poster presentation)
気候変化や人為的な土地利用変化(過放牧など)は、草原生態系のバイオマスや着葉期間に年変化をもたらすと予測される。そのような植物の生態現象の変化は草原生態系の炭素収支に影響を与える可能性があることから、それらの季節変化を長期継続的に観測する取組みが今後重要になってくると考えられる。そこで本研究では、展葉や枯死のタイミングといった葉群フェノロジーや植物バイオマスの季節変化の継続的な観測を低労力かつ低コストで実現するための新しい手法として、デジタルカメラによる定点撮影画像のRGB解析に着目した。
日本の中部山岳地域に位置する草原(岐阜県高山市)に自動定点撮影カメラシステムを設置し、2011年4月から12月にかけて草原の地表面を毎日撮影した。そして、得られた撮影画像から赤・緑・青(RGB値)のデジタルナンバーを抽出し、RGB値に基づいた植生の指標であるGEI値を算出した。同時に、植物体地上部及び地下部バイオマスの計測と地表面の分光植生指数(NDVI等)の観測を約1ヶ月間隔で実施した。そして、GEI値と植物群落の季節変化との対応関係を調査した。
その結果、葉群フェノロジーの季節変化のタイミングにあわせてGEI値は変化した。GEI値と地上部バイオマスとの間には分光植生指数と同様に正の直線関係(R2 = 0.80, p < 0.05)が認められた。また、一部期間(6月から9月)に限って、地下部バイオマスとGEI値との間に正の相関関係(R2 = 0.99, p < 0.01)が示された。以上の結果は、本手法を用いることで、植物体の刈取りなどの破壊的作業を行うことなく、葉群フェノロジーや植物バイオマスの季節変化を連続的に推定評価可能であることを示唆した。今後は、カメラの劣化などに伴う長期観測の不確実性の評価とその対応策の検討が必要である。