| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-015 (Poster presentation)

モミ‐イヌブナ天然林における50年間の動態変化と個体間競争の関係

杉山ちひろ(横浜国立大学・院)*,吉田圭一郎(横浜国立大学),若松伸彦(横浜国立大学),比嘉基紀(北大・院・農),酒井暁子(横浜国立大学)

森林の遷移や更新サイクルを実証的に解明するためには,長期的観察による研究が必要である.また,樹木の動態には個体間競争が関わっていることが知られている.そこで本研究では,モミ・イヌブナ天然林を対象に,50年間の森林動態における個体間関係の役割を明らかにすることを目的とする.

仙台市鈎取山の150×25mの調査区にて,1961年,1981年,2011年に記録された個体の樹種,生死,DBH,樹高,位置のデータを使用して解析を行った.共同研究者らの先行研究によると,調査地の森林は過去50年間で,イヌブナを含む落葉広葉樹の胸高直径階分布がL字型からunimodalに移行し,一方常緑針葉樹(モミ)の優占度が増加している.そこで個体の枯死や成長量への周辺5m以内の隣接個体の影響を検討した.

GLMで解析を行った結果,樹種に関わらず生死は自己サイズに依存し,小さい個体ほど死亡確率が高かった.また,隣接個体を針葉樹高木(>5m),針葉樹低木(<=5m),落葉樹高木,落葉樹低木に分けたところ,樹種に関わらず生死は針葉樹低木の胸高断面積合計に関係し、イヌブナでは周囲に針葉樹低木の現存量が大きいほど死亡率が上昇した.このことは、遷移の進行を促す要因として,上層にある大径木よりも近傍小径個体との光獲得競争が重要であることを示唆する.一方モミでは針葉樹低木の現存量が大きいほど死亡率が下がる傾向にあった.耐陰性が高いため個体間競争の影響が弱く,生死には微地形など他の空間的要因が影響していることを示唆する.


日本生態学会