| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-035 (Poster presentation)
標高傾度に伴う生物群集の変化はよく知られているが内生菌の研究例は少ない。内生菌は無病徴の生葉に感染している菌類の総称であり、二次代謝産物によって宿主の適応度へ影響を与える菌類や、潜在的な病原菌、落葉後に分解菌となる菌類を含んでおり、生態学的に重要なグループである。内生菌群集は標高傾度に沿って変化することが示唆されているが、宿主樹木ごとの変化パターンは調べられていない。本研究では次世代シーケンサを用いたメタゲノミクスで2樹種間の内生菌群集の標高傾度に対する応答を比較した。
2010年7月、知床羅臼岳西斜面の針広混交林において標高50~800mにおける23プロットのトドマツ(Abies sachalinensis var. sachalinensis)とダケカンバ(Betula ermanii)から各3葉、合計138サンプルを採取した。菌類特異的なプライマーを用いたsemi-nested PCR法でribosomal DNA (rDNA)のinternal transcribed spacer 1(ITS1)領域を増幅し、Roche 454 Titaniumにてシーケンスした。その結果113,949配列が得られ、95%相同性閾値にて操作的分類群(Operational Taxonomic Unit: OTU)にまとめ、1169 OTUが得られた。
内生菌OTU組成は宿主間及び標高クラス間で有意に異なった。宿主間で内生菌群集の標高傾度への応答は異なった。また、ダケカンバに選好性がみられる科としてTaphrinaceaeを、宿主選好性がない科としてXylariaceaeを検出した。