| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-038 (Poster presentation)
植物を利用した汚染土壌修復の課題の一つとして、修復効率が悪いことが挙げられる。微生物の中には、植物の成長や汚染物質の吸収を促進させるものが存在することが知られており、これらを利用することで土壌修復の効率化が期待できる。調査地とした鉱山跡地の土壌には、高濃度の重金属が含まれており、福島第一原子力発電所からおよそ100 kmの距離に位置するため、放射性Csによる土壌汚染も懸念される。このような特殊な環境下に生育している植物の中で、高濃度にCdを根に蓄積させることが確認されているクサレダマ(Lysimachia vulgaris L.)に着目し、本植物のCd及び放射性Csの蓄積に与える内生細菌の影響を明らかにすることを目的とした。
鉱山跡地より土壌及びクサレダマを採取し、放射性Cs濃度を測定した。土壌から放射性Csが検出され、表層に特に高濃度で存在していた。クサレダマに関しては、葉、茎、地下茎及び根の全ての部位から放射性Csが検出され、地上部への移行が確認された。根から分離された内生細菌の中に、Feキレーターであるシデロフォアを産生し、CdCO3及びCdSを可溶化する能力を有した菌株の存在が確認された。また、放射性Cs汚染土壌を混合した培地に生育させた分離菌株をイメージングプレートに露光し、オートラジオグラフィーを行った結果、放射性Csを蓄積している菌株の存在が示唆された。
以上のことから、クサレダマのCd及び放射性Csの蓄積に根の内生菌が促進的に関与している可能性があると考えられた。また、シデロフォアを産生する内生細菌の存在により、クサレダマの生育促進へも関与している事が示唆された。