| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-041 (Poster presentation)
貧栄養土壌への適応として、樹木は厚く頑丈な葉を生産する。厚く丈夫な葉構造は葉寿命の増加に貢献し、葉寿命の増加によって樹木体内の栄養塩の滞留時間が増加して栄養塩の利用効率は高まる。一方、葉構造への投資は、構造体(高分子有機物)の合成、二酸化炭素の拡散抵抗の増加、栄養塩再吸収効率の低下、などを通して樹木にとってコストともなる。したがって、栄養塩傾度に沿った葉の構造(特に解剖学的特性)を評価することは、貧栄養土壌への樹木の適応をコストとの関係から考える上で考える上で非常に有効な手段になる。
本研究は、キナバル山山地熱帯降雨林の地質条件の異なる3サイトでおこなった。これらのサイトでは、気候やフロラが同じであるが、初期条件の地質の違いにより土壌P可給性が異なることが分かっている。これらのサイトにおいて、優占樹種の林冠の生葉を各種3個体から採集し、それらについてLMA、強度、繊維量(NDF)などを測定、光学顕微鏡で葉切片の解剖学的特性を観察した。
その結果、土壌Pの低いサイトでは、高いサイトに比べLMAが有意に大きく、それに伴い強度が有意に増加する傾向が見られた。葉中の構造物の割合であるNDF(乾燥重に対する%)は、サイト間で有意な差が見られなかった。したがって、樹木は土壌P可給性の低下に対する適応として、葉中の乾燥重当たりの構造物の濃度(%)を保ったままLMAを増加させることで、強度を高めていることが示唆された。解剖学的特性についての結果も報告する。