| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-042 (Poster presentation)

小笠原乾性低木林に生育する樹木の乾燥ストレス耐性の比較

*奥野匡哉(京大・生態研),才木真太朗(京大・生態研),吉村謙一(京大・生態研),中野隆志(山梨県・環境研),石田厚(京大・生態研)

小笠原諸島は、亜熱帯の中では降水量が少なく、また、尾根部では土壌が未発達である。このような場所では、乾燥ストレスにさらされ、樹高2m前後の乾性低木林が成立する。この林分を構成する木本種は、葉厚や材密度など、形態的に多様であるため、乾燥ストレス耐性もたらす仕組みも多様であると考えられる。そこで、本研究では、小笠原の乾性低木林に生育する、シマイスノキ、シャリンバイ、テリハハマボウ、ムニンネズミモチ、ハウチワノキを対象に、乾燥強度の異なる、6月、7月、9月、12月に水バランスを測定し、その季節変化を明らかにした。

最も強い乾燥が7月に発生し、5種ともに、水ポテンシャル、光合成、気孔コンダクタンスなどで極端な低下がみられた。比較的乾燥が穏やかな9月には、光合成、水ポテンシャルは、雨期である6月と同じような値に回復したが、通水性に関しては、回復した種と回復しなかった種が現れた。気孔コンダクタンスは比較的低いままであった。

また、材密度が5種の中で最も高いハウチワノキは、水ポテンシャルが-5 MPaまで減少したが、材密度が最も低いテリハハマボウは-2 MPaまでしか減少しなかった。しかし、この2種の光合成の値は5種の中で特に高かった。また、材密度は水ポテンシャルと負の相関が、AmaxとGmaxでは正の相関がみられた。

このように、小笠原の乾性低木林では、7月に最も強い乾燥ストレスがかかり、そのストレスを様々な仕組みで乗り越えていることが示唆された。また、形態的な特性と、生理的な特性が密接に関わっていると考えられる。これらの種の生理的な乾燥耐性と、その形態との関連性を紹介する。


日本生態学会