| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-047 (Poster presentation)
温暖帯の落葉広葉樹二次林には多くの常緑草本種が生育している。林床の光環境が林冠木の着葉と落葉によって季節的に大きく変化するもとで、これらの常緑性植物の純生産は夏に低く、秋から春の時期に高いことが知られている。しかし、光合成や呼吸の季節変化からそれを裏付けた研究は少ない。そのため、本研究では林床の常緑草本オオバジャノヒゲ(Ophiopogon planiscapus)の成長とともに、光合成と呼吸速度の季節変化を詳しく調べ、物質生産過程を解析することにより、常緑の林床草本の生活史特性を解明することを目的とした。
調査は毎月20個体をサンプリングし、葉長、葉幅から葉面積、葉の乾燥重量のアロメトリー式を求め、野外に生育する標識個体の葉面積及び葉重量、個体重の季節変化を追跡した。また、毎月ラミートを採取し、実験室において、光―光合成関係を葉齢別に、温度―呼吸関係をラミート毎に測定した。
オオバジャノヒゲの物質生産過程は5月から10月にかけての発達相と11月から4月にかけての生産相の二つの相に分けられた。発達相においては、純生産の値が負もしくは低い値を示し、葉の枯死量も多くなり、日積算光量子から求めた光合成生産量においても負の値を示した。生産相においては、純生産が大きく正の値を示し、LMAの値も全ての葉齢において大きく増加し、発達相にはいると減少を始める。また、貯蔵根量も3月から4月にかけて増加し、発達相においては減少した。光合成活性は当年葉、1年葉共に夏は低く、冬から春にかけて増加する傾向がみられ、呼吸速度は季節的な温度順化を示した。以上の結果より常緑林床草本の生活史特性について考察する。