| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-050 (Poster presentation)
調査地の青森県ヒバ天然林に生育するヒバ実生は、植物に生育阻害作用を示すAlを多く含有し、Al解毒機構を有することが示唆されている。植物のAl解毒機構の一つとして、カテキン・有機酸との結合によるAlの無毒化があり、実生もカテキンを産生することがわかっている。既往の研究から、実生地際部に内生するPhomopsis属糸状菌が実生のカテキン量を増加させることが確認されている。
本研究では、実生胚軸部の内生菌が関与するAl解毒機構の解明を目的とし、調査地に生育する2年生実生を対象に、含有Al、カテキン、有機酸濃度の測定、胚軸部からの内生菌分離、Alとカテキンの局在部位比較を行った。
実生の含有Al、カテキン濃度は他植物の報告と比べて高く、根に多く確認された。根ではAl、カテキン量ともに乾燥重量と正の相関を示し、皮層に多く局在していた。Al解毒機構への関与が報告されている有機酸は検出されなかった。実生胚軸部からはカテキンを誘導する可能性の高いPhomopsis属糸状菌及び黒色の内生糸状菌が分離され、ヒバ実生は、胚軸部の内生菌感染が関与した、カテキンによるAl解毒機構を有することが示唆された。しかし、0、100、500μMのAlを添加した水耕培養液を使用し、最も高頻度に出現した黒色内生糸状菌の実生への接種試験を10日間行ったところ、未接種区と比べ、接種区の実生のカテキン含有量は増加しなかったため、黒色内生糸状菌の感染は、短期間では実生のカテキン含有量に影響しないことがわかった。よって、カテキンによるAl解毒機構に関与する内生菌はPhomopsis属糸状菌である可能性が示唆されたが、水耕培養液を使用した接種試験では短期培養しかできないという問題点もある。現在長期培養を考慮に入れ、検討中である。