| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-054 (Poster presentation)
小笠原諸島は火山活動により海中から隆起した海洋島であり、大陸と陸続きになった歴史を持たない。そのため島の成立時には陸生の植物が全く存在しておらず、他の陸地から植物の種子が散布され島に到着し、定着し種分化が起き、現在の小笠原諸島の植物相が成立したと考えられる。さらに、小笠原の夏の降水量は同緯度の沖縄に比べて半分と少なく、降水は主にスコールか台風によって起こるため年間降水量の変動も大きいため植物は乾燥しやすい環境で生育してきたと考えられる。
小笠原諸島に生育する固有種テリハハマボウは海流によって運ばれてきたオオハマボウが起源で、オオハマボウが適応放散した結果島の土壌が深く湿潤な谷部から土壌が浅く乾燥した尾根部にかけて樹高を最小1mから最大16mもの幅で変化させながら広く分布している。乾燥勾配に沿ってテリハハマボウの形態特性(樹高、木部道管サイズなど)、生理特性(葉の水ポテンシャル、枝の通水量など)を比較した。
乾燥勾配に沿って土壌は浅く樹高は低くなり葉は厚くなり幹の木部道管の大きさは小さくなる傾向がみられた。Predawnの葉の水ポテンシャルは夏の7月で最も低く、土壌の浅いところでは特に低かった。これは7月が最も乾燥している時期であること、土壌の浅いところがより乾燥しやすいことを示している。7月に測定したMiddayの葉の水ポテンシャル、Amax、gmaxの値は乾燥勾配に関係なくほぼ一定であった。
以上から、土壌の浅いところでは夏の短い期間の乾燥による制限を受けて形態の変化が起きているのだろう。大会ではさらに乾燥勾配に沿った枝の通水性についても考察していく。