| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-058 (Poster presentation)

長短期塩分ストレスに対するヒルギダマシ(Avicennia marina (Forsk.) Vierh.)の葉の炭素・酸素安定同位体比の応答

*齋木拓郎(三重大・生資),松尾奈緒子(三重大院・生資),野口よしの(兵庫県大),宮田慎吾,谷口真吾(琉球大・農),山中典和(鳥取大・ 乾地研)

長期平均的な水利用効率を反映する葉の有機物の炭素安定同位体比(δ13Com)と長期平均的な気孔コンダクタンスを反映する葉の酸素安定同位体比と茎内水の酸素安定同位体の差(∆18Oom)が塩分ストレスに対してどのように応答するのかを解明するため,ヒルギダマシの稚樹に0,1,3%NaCl溶液を与える実験を琉球大学農学部ガラス室で行った.さらに,沖縄県うるま市洲崎の高塩分区と低塩分区に生育するヒルギダマシの成木を対象に,葉のδ13Comと∆18Oomを測定した.ヒルギダマシの稚樹のδ13Comは塩水付加後に展開した葉では高濃度処理個体ほど高くなったのに対し,塩水付加前に展葉した葉では濃度間で差がなかった.また,∆18Oomは塩水付加前に展開した葉では濃度間で差がなかったのに対し,塩水付加前に展開した葉では高濃度処理個体ほど低くなった.一方,瞬間的な光合成速度と気孔コンダクタンスは展葉時期に関らず高濃度処理個体で最も低かった.したがって,水利用効率や気孔コンダクタンスは塩分ストレスに応答していたが,葉の展葉時期によっては安定同位体比に反映されない事が分かった.野外の高塩分区と低塩分区のδ13Comと∆18Oomを比較すると平均値には差がなかったが,ばらつきは低塩分区の個体の方が大きかった.これは,低塩分区の個体の方がサイズが大きいため,通水抵抗が大きいことに起因すると考えられた.


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