| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-060 (Poster presentation)
近年,乾燥地において土壌塩類集積による植生の荒廃が深刻な問題となっているが,こうした地域は植物の利用可能な窒素量も極めて少ない.そのような環境でも生育できる塩生植物を植生の修復に利用するため,それらの窒素吸収メカニズムの解明が重要な課題となっている.本研究では,植物体の有機物中の窒素安定同位体比(d15N)がその植物の窒素吸収源のd15Nを反映していることを利用して,中国新疆ウイグル自治区の北西に位置するアイディン湖(塩湖)付近の塩分の析出状態や植生が異なる4サイトにおいて塩生植物の葉と周辺土壌のd15Nを測定し,それらの窒素利用様式について考察した.
その結果,Tamarix- hispidaでは葉のd15Nが土壌中の全窒素のd15Nとほとんど同じ値かやや低い値であったのに対し,その他の4樹種では葉のd15Nが土壌の全窒素のd15Nよりも高い値であった.これらの傾向と土壌中の塩分濃度には関係がなかった.したがって,本調査地のT. hispida以外の塩生植物は土壌塩分濃度に関わらず,d15Nの高い窒素プール(アンモニア態窒素)を利用していることがわかった.それに対して,T. hispidaはd15Nの低い窒素プール(硝酸態窒素)とd15Nの高い窒素プール(アンモニア態窒素)の両方を利用しており,両者の寄与率は生育環境によって変動する可能性が示唆された.