| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-062 (Poster presentation)
植物は炭素や窒素を用いて新たな葉を構築するが、この炭素は光合成により同化したものであり、窒素は主に根で吸収したものである(古葉からの転流も含まれる)。光合成速度が高い種においては同化される炭素量が多く、葉へのバイオマス分配も多いと考えられるため、相対的に窒素が薄まり、ひいては葉窒素濃度も低くなると考えられる。しかし、実際には光合成速度が高い種は葉窒素濃度も高い。これは光合成の生化学的メカニズムからすれば当然だが、先述の新葉構築メカニズムからすると疑問が残る。この疑問を解決するため、「光合成速度が高い種は根における窒素吸収速度も高いのではないか?」という仮説の下、研究を行った。
本研究では落葉木本4種・常緑木本4種・一年生草本2種・多年生草本2種を用いて、最大光合成速度、葉窒素濃度、根表面積、器官ごとのバイオマス分配などを測定した。無機窒素吸収速度は、根切片にアンモニウム態あるいは硝酸態の15Nを与え、吸収量を測定することで決定した。
その結果、光合成速度が高い種はアンモニウム態窒素の吸収速度も高いという結果が得られた。また、対象種からオオオナモミを除いて解析を行うと、光合成速度とアンモニウム態窒素吸収速度の間の相関は強くなり、硝酸態窒素吸収速度とも相関が検出された。
本研究より、光合成速度が高い種は根における窒素吸収速度も高いということが分かった。しかし、光合成速度が高い種が葉窒素濃度も高い理由は高い窒素吸収速度以外にもあると考えられる。