| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-090 (Poster presentation)
樹木の生活史において、種子や実生といった初期段階は特に死亡率が高く、成木の分布や種の多様性を決定する時期であるため、散布された種子群集や実生群集の動態を解明することは重要である。また、樹木の種子生産にはマスティングがある種が多く存在するため、これらの動態解明には長期観測が必要である。さらに、光などの環境要因は、実生定着制限として働くと言われているが、種子散布制限と比較した相対的な強さは、暖温帯二次林においてあまり研究されていない。そこで本研究では暖温帯二次林において、種子と実生群集の構造と動態を調べ、実生定着を制限する要因を解明することを目的とした。
愛知県瀬戸市の二次林において、5つの各プロットにシードトラップと4m2実生コドラートを9~16個設置し、2009年5月~2011年11月にかけて木本種子散布量調査とリター量調査を、2010年5月~2012年11月にかけて当年生の木本実生調査を行った。さらに、2010年~2012年着葉期において、各コドラートにおける光量も計測した。非計量多次元尺度構成法(NMDS)を用いて、種子群集と実生群集、プロット間、観測年間での種組成の類似性を明らかにした。また、一般化線形混合モデル(GLMM)を用いて、主要樹種の種子密度や光環境やリター量が実生定着の年変動に与える影響を解析した。
散布種子の種組成は、プロット間や観測年間で異なり、ウリカエデなどの種におけるマスティングが見られた。また、種子群集と実生群集で種組成が異なることから、種子が発芽するまでの期間に制限が働いている可能性が示唆された。GLMMの結果、光環境が一部の種の実生密度に影響を与えていた。本研究の結果は、今後ナラ枯れに伴う高木枯死の影響で光環境が変化することにより、二次林の更新動態に影響が及ぶことを示唆している。