| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-093 (Poster presentation)
半自然草地は人間活動によって森林への変化が押しとどめられ維持されてきた。しかし現在は遷移の進行により森林化が進んでいる。本研究では、かつて佐渡島大佐渡地域で広範囲に行われた林間放牧に着目し、昭和期以降の植生の分布変化,現在の植生及び歴史的背景を地理情報科学、生態学、歴史学の3方面から統合的に明らかにする。
調査地には,大佐渡地域内からドンデン山地区と大倉越地区を選定した。方法は空中写真解析,植生調査及び歴史資料・聞き取り調査の3つを行った。空中写真解析ではGISを使用して1976年と2006年の空中写真から草地面積を比較した。また,現地調査では草地区,灌木区,森林区に分けた植生調査を実施した。そして歴史的資料・聞き取り調査では図書館や市役所,各集落等で行った。
島内の牛の飼養頭数は1960年の6630頭を境に徐々に減少している。これに対し,聞き取り調査及び関連資料から1950年以降の農業の機械化の影響を大きく受けていることが示唆された。さらに,空中写真の解析による草地の面積は、30年間でドンデン山地区、大倉地区でそれぞれ16.3ha、2.8haから-8.0ha、-2.4haの大幅な減少となった。一方植生調査では、草地区では嗜好性のあるシバやオオウシノケグサが上位の頻度を占める一方、高茎草本であるススキも上位を占めていた。さらに、灌木区では嗜好性のあるイタヤカエデが上位の頻度を占める一方、不嗜好性のハナヒリノキやレンゲツツジが上位を占めていた。以上より、昭和30年以降の農業機械化が林間放牧を衰退させた大きな要因となり、現在も遷移を進行させているが、遷移途中の森林の種組成に放牧による影響があることが示唆された。