| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-099 (Poster presentation)

管理放棄された都市近郊二次林における自然発生的な萌芽枝

*吉田幸弘(京都大・農), 北山兼弘(京都大・農)

「里山」と呼ばれる日本の都市近郊二次林は、持続可能な森林資源利用をしてきた森林として、また生物多様性保全の場として、近年注目を集めている。都市近郊二次林は小面積皆伐を繰り返してきたという履歴を持つ森林であるため、成長の速いパイオニア種と共に萌芽更新しやすい樹種が多く存在し、必然的に萌芽更新の重要性は高いと言える。

萌芽更新とは萌芽枝を用いた幹更新のことである。伐採などの主幹損傷の際に発生するシュートだけでなく、主幹損傷なしに主幹地際付近や地下部から発生するシュートも同様に萌芽枝と呼ぶ。このうち自然発生的な萌芽枝は、実生から成木に至るまで幅広い成長段階において発生するものであるため、樹木の更新において重要であると言える。

自然発生的な萌芽枝は高木性の樹種でも報告例はあるものの、一般的には高木性の樹種よりも低木性の樹種でよく見られるとされている。しかし、萌芽枝数の多少や有無の種内差、種間差が何から生じるのかについては、研究例が少ない。

一方で管理放棄された都市近郊二次林においては、主幹損傷なしで発生する「自然発生的な萌芽枝」を用いた萌芽更新の重要性は、主幹損傷による萌芽更新以上にますます高くなると言える。

そこで、管理放棄された都市近郊二次林において、

1:どのような樹種が自然発生的な萌芽枝を発生させているのか

2:低木種コバノミツバツツジについて、親株の大きさや光環境と萌芽枝の発生との間にどのような関係があるのか

3:亜高木種ソヨゴについて、実生段階での萌芽枝の形態や生態学的な役割はどのようなものなのか

という3点を通して自然発生的な萌芽枝の特性を把握する。そしてそこから、管理放棄された都市近郊二次林の将来の植生に影響を与えうる、自然発生的な萌芽枝を用いた萌芽更新について検討する。


日本生態学会