| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-101 (Poster presentation)
二次的自然を代表する水田地域においては,様々な景観要素に多様な群落が成立している。これらは相互に関係しており,保全を図る際には一つの景観スケールとしてとらえるべきである。しかし,水田地域の景観スケールにおける群落構造や立地環境との関係性を明らかにした研究はほとんどない。また群落型相互の関係性を扱った研究も少ない。本研究では長野県上伊那地方を事例として,景観スケールにおける群落構造と立地環境との関係性を明らかにし,群落保全の基礎的知見を得ることを目的とした。
調査地区としては立地環境として地形や土地利用,圃場整備状況の異なる9地区が選定された。各地区は土地利用状態を反映するよう500m直径の円形区で設定し,その面積約20haを一景観スケールとして定義した。植生調査は事前調査において出現種数が多く,景観スケールの立地環境との関係性が予想された5タイプの景観要素(水田,休耕地,畦畔,法面,道路)に成立する群落1㎡を対象に実施した。調査プロットは各地区に設定した25mメッシュの交点から選定し,各調査地区で約90プロット,全地区で計850プロットの植生資料を収集した。群落データはTWINSPANによって類型化し,各群落型と立地環境との関係について考察した。
全プロットは16タイプの群落型に分類された。各群落は,全地区で広く分布するタイプや,特定の景観要素及び立地環境に分布するタイプが認められた。山地部の法面にはススキやトダシバ,ヒメシダの優占する群落が特徴的に分布し,構成種にはカワラナデシコ,希少種のスズサイコなど草原性植物が多数含まれた。平野部の水田では,ウキクサの優占する群落型が特徴的に分布し,構成種にはイトトリゲモやシャジクモなどの希少な水湿性植物が多数含まれた。大会当日は,さらに各群落型の種組成の特性を踏まえた考察を行う。