| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-104 (Poster presentation)
水田は灌水、中干、稲刈りといった農作業や稲自身の成長に伴ってその環境が変化するため、時間的な異質性が高い。また、水田は田面、水路、畔という構成要素から成り、さらに森林などが隣接することで空間的な異質性が高くなる。水田の時間的異質性は、田面が時間の変化に伴い、他の環境と比べ好適な環境にも不適な環境にもなりうるので、生物は時間的な変化に対して田面とその他の環境を利用して個体群を維持していると考えられる。そのため、空間的異質性は時間的異質性の高い水田環境に対して、影響を与えることが推測される。空間異質性は生物に対して、各環境が餌生物の提供や避難場所など異なった機能を持ち、水田の構成要素と森林が組み合わさることで新たな生息場所として機能するなど生物の個体群維持に正に影響する可能性がある。しかし、水田の時間的異質性に対して空間的異質性が生物の個体群維持に与える影響はよくわかっていない。
そこで本研究は水田環境で比較的多く見られるアシナガグモ類4種を対象に、それらが時間的異質性に対して生息環境を変化させ、森林が隣接したより異質な空間に対して個体群維持に正の影響を受けるかどうか明らかにすることを目的とする。調査は栃木県塩谷町の森林が隣接する水田、隣接しない水田の田面、水路、畔、また森林が隣接する場合は林縁でアシナガグモ類4種の密度をスイーピングまたは目視で求めた。調査時期は7月(間断灌水)、9月(稲刈り前)、10月(稲刈り後)に行った。この調査によって時間的な変化に対してアシナガグモ類4種のそれぞれの各環境における密度の変化と、水田に森林が隣接することでアシナガグモ類4種の密度に与える影響を解析した。それらの解析結果から水田環境の時空間的異質性がクモ類の個体群維持に与える影響を考察する。