| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-108 (Poster presentation)

都市化とチョウ類幼虫 - 捕食寄生者系

*阪根浩平, 小池文人(横浜国大院 環境情報)

節足動物は生態系の重要な構成要素である一方,大量発生は樹木の食害などの被害を及ぼす. チョウ類幼虫などの植食性の節足動物の個体群制御では捕食寄生者(寄生蜂や寄生バエ)が重要な生態系調節サービスを担っているが,都市では上位の捕食者の欠落が起きているとの指摘がある.この研究ではチョウ類幼虫とそれに対する捕食寄生の系を考え,この系への都市化の影響を解明することを目的とした.

調査は2012年5月~10月までに都市から里山に至る4つの異なる景観(埋立地,市街地,耕作地,里山)に調査地を設定した.ラインセンサス法によりチョウ類幼虫の食餌植物の探索とチョウ類幼虫の採集を行い,発見したチョウ類幼虫を飼育して寄生率の調査を行った.また,黄色粘着トラップによる捕食寄生蜂類の捕獲調査も同時に行った.食餌植物-チョウ類幼虫-捕食寄生者の出現と景観との関係を把握するために, 植生図を利用して「都市化率」と「樹林草地比」を算出した.それらに季節を加えて説明変数とし,探索距離あたりの食餌植物出現,食餌植物あたりのチョウ類幼虫の出現,チョウ類幼虫あたりの捕食寄生,黄色トラップによる捕食寄生蜂数を目的変数として,一般化線形モデル(GLM)により3者系に影響する要因を探索した.

チョウ類幼虫-捕食寄生者の系は都市化に対する明瞭な反応を示した.一般的にチョウ類幼虫出現率と捕食寄生率は広域スケールの里山で高い場合が多かったが,都市で出現率が高い種もあった.例として,ナミアゲハの食餌植物であるミカン科は里山の耕作地に多かったが,ナミアゲハ幼虫は食餌植物あたりでは都市に多く出現し,ナミアゲハの捕食寄生率は広域スケールの里山で高かった.人為的防除の影響も考えられるが,都市より里山で個体群制御が強く働いていることが推測された.


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