| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-117 (Poster presentation)

隣接する2個体の遺伝子型が同じか異なるかによって、食害後の植物の応答は変化するか?

*深町美智(首都大・理),可知直毅(首都大・理),鈴木準一郎(首都大・理)

食害された植物が防御反応を示すことは知られている。一方、隣接する個体が食害されると、未だ食害されていない個体も食害前防御を示す可能性がある。植物では地下茎などの接続により同じ遺伝子型の個体が隣接して分布することが多い。そのため、食害された個体から同じ遺伝子型の隣接する個体に、食害情報が伝達され、それに応答できれば、有利となる可能性がある。そこで、隣接個体の遺伝子型と食害が植物の成長量に及ぼす影響を栽培実験により検討した。

材料の植物には、イタドリを、植食者にはハスモンヨトウを用いた。一鉢に2本の地下茎を植え、一方を操作個体、他方を評価個体とした。以下の3処理、操作個体と評価個体の遺伝子型が同じか異なるか、操作個体の食害の有無、評価個体の遺伝子型、を設けた。65日間の栽培後、各鉢の操作個体のみに食害を2日間加え、植食者を回収した。さらに7日間栽培し、植物を刈り取り、乾燥重量を求めた。

3処理間で評価個体の重量を比較した。操作個体に食害がないと大きい傾向が見られ、操作個体と評価個体の遺伝子型の異同による差はなかった。一方で、評価個体の個体重には、評価個体の遺伝子型によって差がみられた。そこで、評価個体の遺伝子型ごとに、操作個体の食害と操作個体と評価個体の遺伝子型の異同について比較した。その結果、ほとんどの遺伝子型の評価個体で、操作個体が食害されない場合に、個体重が大きい傾向が見られた。また、全ての遺伝子型の評価個体で、評価個体と操作個体の遺伝子型が同一でも異なっても、個体重に有意な差は見られなかった。以上より、隣接する個体の食害に対して、隣接個体の遺伝的背景に関わらずイタドリは応答し、成長量が変化すると考えられる。


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