| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-126 (Poster presentation)
冷温帯のスキーゲレンデに侵入したマメ科外来種のムラサキツメクサは、春から秋にかけて多くの花序を形成し、花粉媒介者を利用した有性生殖による種子繁殖を行なっている。訪花する昆虫類と花粉媒介の関係を調べるため、長野県白馬村のスキーゲレンデを調査地に選び、2012年8月上旬の晴天・微風時に(のべ2日間)、8時から15時の間に調査を行なった。ムラサキツメクサの花に訪れた昆虫類を見つけ次第直ちに採集し、室内に持ち帰って同定した。各昆虫類の口吻長を測定すると共に体表に付着していた花粉を同定し、ムラサキツメクサの花粉数を計測した。また、花筒長を測定すると共に、BCG試験紙を各花の蜜腺まで挿入して蜜を浸み込ませ、蜜量を計測した。ムラサキツメクサに訪花した昆虫は12種(ハナバチ類4種、チョウ類5種、甲虫類2種、ハエ類1種)で、トラマルハナバチとモンキチョウの訪花頻度が高かった。ムラサキツメクサの花粉はハナバチ類の体表に多く付着しており、シロスジヒゲナガハナバチが最も多く、次いでトラマルハナバチ、ミヤママルハナバチ、アカガネコハナバチの順になった。一方、チョウ類とハエ類、甲虫類にはほとんど付着していなかった。トラマルハナバチとミヤママルハナバチ、そしてすべてのチョウ類の口吻長は花筒長よりも長かった。各花の現存蜜量は0~0.9μlとばらつきがみられたが、花序の開花段階や花序内での開花位置による明確な違いは認められなかった。これらの結果から、ムラサキツメクサにとっては、訪花個体数と付着花粉数が共に多いトラマルハナバチが招待された送粉者である一方、モンキチョウは訪花個体数が多いものの蜜だけを吸って花粉媒介をしない無銭飲食者であると考えられた。