| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-129 (Poster presentation)

周年結実性のアコウ果実の一年を通した利用パターンはヤクシマザルと鳥で異なる

浜田飛鳥(京都大・霊長類)

屋久島には、ヤクシマザル、ヒヨドリ、メジロなどの果実食動物が生息している。イチジク種子散布者としての霊長類の重要性は熱帯ではすでに明らかにされているが、温帯での研究はまだ行われていない。本研究では、一年を通して非同調的に結実し様々な大きさの動物種に採食されるという特性をもつイチジクの一種であるアコウ果実を対象とし、屋久島に生息する動物群集の果実利用の季節的な変化とその要因を明らかにすることを主な目的とした。調査は鹿児島県熊毛郡屋久島町の西部林道川原地区で、2011年9月から翌年9月までの毎月約10日間行なった。調査はアコウの定点観察と鳥類のセンサス、アコウ及びその他の種のフェノロジー調査を行なった。得られたデータから、動物群集の果実の利用に季節的な変化が見られた。アコウ果実を最も多く利用していた種はヤクシマザルとヒヨドリで、果実消費量はそれぞれ91%、4%を占めていた。一般線形モデルによる解析結果から、ヤクシマザルはアコウの結実本数が少ない時、アコウ以外の種の結実本数が少ない時、そして気温が高い時に、1本当たりのアコウ果実の利用が増加する傾向にあり、ヒヨドリは気温が低い時に1本当たりのアコウ果実の利用が増加する傾向にあることが明らかになった。ヤクシマザルは食物資源の乏しくなる冬になると、森林内に低密度でしか存在しないアコウ結実木を探すための移動によるエネルギー損失を抑えて、容易に発見できる葉などの低栄養な食物を食べることを優先させるためこのような結果になったのだと考えられる。ヒヨドリは冬に昆虫食から果実食へと切り替えるため、アコウ果実の利用が増加したと考えられる。また、ヒヨドリによるアコウ果実の利用はヤクシマザルの存在によって抑制されていることも明らかになった。


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