| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-133 (Poster presentation)

2種の植食性昆虫が誘導するウマノスズクサの補償成長

*橋本洸哉, 大串隆之

植食者の食害が誘導する植物の補償的な再成長は、被食に対する植物の耐性反応の代表である。近年の研究から、植食者に誘導される植物の反応は、食害する植食者の種によって大きく異なることがわかってきた。しかし、植物の耐性反応も植食者の種によって左右されるかについては未だに議論が続いている。

ウマノスズクサは日本に自生する多年生草本で、2種のチョウ(ホソオチョウとジャコウアゲハ)の幼虫の寄主植物である。これまでの研究から、ウマノスズクサは2種のチョウのどちらの食害を受けても、その後、著しい再成長をすることがわかっている。

本研究の目的は、ウマノスズクサの再成長の強さが食害を与える種に左右されるかを明らかにすることである。特に、(1.)2種のチョウの間で被食レベルはどのように異なるか? (2)再成長パターンはどちらのチョウの食害を受けたかによって異なるか? (3)再成長パターンに違いが観察された場合、それはどのようなメカニズムによるものか? に注目して室内実験をおこなった。

その結果、ホソオチョウの方がジャコウアゲハより与える被食レベルが小さかったこと、食害レベルが低いホソオチョウによる食害を受けたウマノスズクサの方が、食害レベルが高いジャコウアゲハの食害を受けたウマノスズクサより、補償成長が大きいことが分かった。このことから、両種の与える被食レベルの違いが補償成長の程度に影響を与えることが示唆された。さらに、ジャコウアゲハの方がホソオチョウよりも多くの側芽(成長点)を消費することも明らかになった。再成長の強さは成長点の数に依存するため、ジャコウアゲハによる葉の食害は大きい一方で、再成長できる成長点が大幅に減少したため、ホソオチョウに比べて再成長の程度は小さくなったものと推察された。


日本生態学会