| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-134 (Poster presentation)

地下部植食者に起因する植物のダメージは水分供給の様式により変化するか?

*角田智詞,可知直毅,鈴木準一郎(首都大・理工・生命)

降水の量やパターンの変動は、植物への直接的影響に加え、土壌湿度を変化させ、土壌棲の植食性昆虫(植食者)の分布を介して間接的にも影響しうる。そこで、仮説「植食者による植物のダメージは、水分供給の様式により変化する」を、同一の鉢で植物と植食者を育成する3要因(水分供給の総量と頻度、植食者の垂直分布)の栽培実験で検討した。

植物にはヘラオオバコを、植食者にはドウガネブイブイ幼虫を用いた。水分供給総量には多と少の2条件を、水分供給頻度には高と低の2条件を設けた。各供給総量内では、頻度による全実験期間の供給水量の差はない。27日間の栽培後、1匹の植食者を加え、さらに28日間育成した。植食者については、5条件(植食者がいる層が土壌の上層、中層、下層、移動制限無し、植食者無し)を設定した。55日後に刈取り、乾燥重量を求めた。

供給総量が多い条件と、土壌の下層では、土壌湿度は高かった。土壌湿度の変動は低い供給頻度で大きかった。植物重に対する、供給の総量と頻度、植食者の3要因の交互作用は有意だった。供給総量が多いと、植物重は大きく、植食者の存在下では両供給頻度で減少した。植食者が上層にいると植物は小さく、同様の傾向が移動制限無し条件でも見られた。一方、供給総量が少ないと、植食者の存在下で植物重の減少は、高頻度のみで見られた。移動制限が無いと、給水頻度により植物重は異なり、高頻度では上層条件、低頻度では下層条件とほぼ等しかった。

土壌湿度が高いと、植物の成長は大きかった。また、土壌湿度が低く、変動が大きいと、植食者が土壌の下層へ移動した可能性が大きい。このため、水分供給様式に起因した土壌湿度の違いに応じて、植物の成長と植食者分布が変化し、植物のダメージが異なったと考えられる。


日本生態学会