| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-135 (Poster presentation)

水田地域を構成する多様な環境がチョウ類群集及び植物との関係に及ぼす影響

*不破崇公(信州大院・農),大窪久美子,大石善隆(信州大・農)

二次的自然を代表する里地里山の荒廃が進み,そこを生息地とするチョウ類の多くが地域絶滅や絶滅の危機に瀕している。これらの中には局所生息地を有する種もおり,生息・生育環境の保全・保護に向けた詳細な分布や生息環境の把握が重要である。またチョウ類は優占する帰化植物を重要な餌資源として利用しているとも考えられ,在来植物との関係の保全も問題なっている。本研究では,調査ルートのピッチを細分化することで,水田地域におけるより詳細な環境要素とチョウ類群集及び植物との関係を把握し,チョウ類の保全計画に資することを目的とした。

調査は比較的良好な里地里山の残存する長野県上伊那地方の水田地域において,中山間地(A,B,C,D)および市街地(E,F)の基盤整備の有無が異なる4つの立地条件,計6ヶ所で実施した。群集調査にはルートセンサス法を用いた。各ルートは,総延長2kmを25m間隔で80区画に分割し,目撃したチョウ類の種数,個体数を記録した。チョウ類の吸蜜行動を目撃した場合に種名と個体数,植物種名,位置,また区画を構成する環境要素を記録した。調査時期は2012年5月中旬から10月上旬,月2回,計10回行なった。

その結果,総出現種数は中山間地A,B,C,D地区の順に44種,47種,41種,40種,市街地E,F地区では19種,17種を記録した。中山間地では地域内で局所生息地を有すると考えられるオナガシジミやヒメシジミ,オオムラサキ,オオヒカゲ,絶滅危惧ⅠB類に指定されているヤマキチョウを記録した。ヤマキチョウを除くと,これらの確認個体数は少なかった。発表では,これらの種が出現した環境要素や分布集中区画の吸蜜植物等の要因について考察する。


日本生態学会