| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-138 (Poster presentation)

ギフチョウ属2種の産卵数・食草密度の年変動とその要因

*脇坂茜,安斎和樹,佐藤衣里,林田光祐(山形大・農)

里山を代表する昆虫であるヒメギフチョウ(以下:ヒメ)とギフチョウ(以下:ギフ)は、それぞれ落葉性多年草であるトウゴクサイシンと常緑性多年草であるコシノカンアオイを食草とする。2種は、近年の二次林の管理・利用の衰退等により絶滅が危惧されていて、環境省のレッドデータブックに記載されている。本研究では2種の産卵数と食草密度の年変動とその要因を検討することを目的とし、混生地で2009年から2012年にかけて調査を行った。

2種の混生地である山形県最上郡鮭川村に、2009年に16m2の調査区をヒメ・ギフ生息地に各12か所、2010年にはギフ生息地にさらに6か所設置した。2012年までの4年間で、春に産卵数の計測と食草密度の調査として株数・葉数(コシノカンアオイの場合は新葉・古葉数)・葉柄の直径の計測を行い、2009年と2011年には加えて秋にも食草密度の調査を行った。

産卵数と食草密度の4年間の変動は2種で大きく異なっており、特にヒメの変動が大きかった。ヒメの産卵数は前々年から前年にかけての食草の増減率が高いと増加する傾向があり、食草密度は前年秋の食草の残存率と相関関係が認められた。このことから、ヒメの産卵数の変動は前々年から前年にかけての食草の増減率で説明が可能であり、食草密度の変動要因は前年秋の食草の残存率と考えられた。それに対し、ギフの産卵数は食草の増減率とは関連が認められず変動要因は明らかにできなかったが、食草密度は前年春の古葉の量が翌年の新葉の量を決める主な要因であると考えられた。以上より、混生地においてヒメとギフの産卵数の年変動が大きく異なる要因のひとつとして、落葉性と常緑性という両種の食草の異なる性質が産卵数と食草密度の相互関係に違いをもたらしていることが考えられた。


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