| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-143 (Poster presentation)
一次遷移初期において、窒素固定植物は有利であり、リターを通じて生態系発達促進の役割を担う。一方、葉の窒素濃度が高い植物は生態化学量論的観点から植食性昆虫に選好されやすいと考えられる。本研究の調査地である三宅島は2000年に大噴火し、陸上生態系が大きな攪乱を受けた。噴火被害地において、オオバヤシャブシ、ハチジョウイタドリ、ハチジョウススキが多くみられ、そこではコガネムシ科イズアオドウガネの大量発生も報告されている。本研究ではこれらの先駆植物に対するイズアオドウガネの選好性を安定同位体比分析とカウントデータをもとに明らかにすることを目的とした。
調査は2012年7月に行った。島内に10のルートを設定し、対象種の植被率、食害率を調べ、対象植物種別にイズアオドウガネのカウントを行った。また、ルートごとに対象植物種とイズアオドウガネを採集し、安定同位体比分析を行った。
植物の窒素濃度に関しては、要因を種、地点とした二元配置分散分析とBonferroni型多変量解析を行った結果、ヤシャブシ・イタドリ間以外有意な差が見られた(P≦0.05)。選好性に関しては、Bonferroni型多変量解析で、ススキが避けられ、イタドリが好まれる結果が見られた(P≦0.05)。また、安定同位体比分析の結果、イズアオドウガネのδ13Cの値がC3植物の値に寄っていたことから、イズアオドウガネ成虫は、C3植物を食べていることが明らかとなり、δ15Nの濃縮係数を考慮した結果、多く地点でイタドリをより選好していることが明らかとなった。以上より、イズアオドウガネは葉の窒素濃度が高いオオバヤシャブシやハチジョウイタドリを選好していると考えられる。