| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-151 (Poster presentation)
多くのポリネーター種において、同等量またはそれ以上の報酬を持つ花が周りにあるにも関わらず、個体毎に特定の種類の花を連続して訪花する傾向(定花性)が報告されている。定花性が生じる原因として有力な仮説に探索イメージ仮説がある。この仮説は、1種類の花の探索イメージを用いて花を探す事で、見つけにくい花を効率的に見つけられるため、定花性が生じるとするものである。この仮説が正しければ、花の見かけが定花性の強さに影響する事が予想される。特に、探索イメージは作業記憶(短期記憶)で形成される情報であるため、花の見かけは、「好みとは独立に、直前に訪れた花と同じ種類の花に訪れる傾向」に影響を与えるだろう。しかし、花の見かけと訪花順序の関係を調べた研究はほとんどない(ただしIshii & Masuda 投稿中)。そこで本研究では、花色と花の大きさを花の見かけに影響する要因とし、これらが定花性にどのような影響を与えるのか、人工花を用いた実験で検討した。
実験では、青、黄、水色に着色した、直径2、4、6㎝の球体の人工花を用いた。いずれかの大きさの花を2色ずつ使用し、花の大きさや色の組み合わせを変えて実験を行う事で、これらの要因がマルハナバチの訪花順序にどう影響するのか調査した。各花色間および、背景(緑)と各花色の間のコントラストは、ハチの錐体細胞感度を元に算出した。
その結果、特定の花色への選好性は、花が小さく、花色間のコントラストが大きい時に強くなった。一方、直前に訪れた花と同じ種類の花に訪れる傾向は、コントラストが大きい時に高まった。
以上の結果は、花が小さい時ほど、ハチが特定の色の探索イメージを利用して花を探している事や、大きな花色間コントラストほど短期記憶の探索イメージに干渉することを示唆しており、総じて、探索イメージと定花性の関連を支持している。