| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-158 (Poster presentation)

土地利用と作物生産 ~統計資料によるポリネーションサービスの評価~

*宇野 正人(東北大院・生命),小黒 芳生(東北大院・生命),佐々木 雄大(東大・新領域),滝 久智(森林総研・森林昆虫),中静 透(東北大院・生命)

ポリネーションは食糧供給において重要な生態系サービスの一つである。作物によっては、野生のポリネーターによるポリネーションサービスを有効活用する必要がある。先行研究におけるポリネーションサービスの評価は局所的に行われたものが多く、様々な環境傾度におけるポリネーションサービスの評価は未だ不十分である。

この研究では、農林水産省による作物統計、環境省による土地利用の統計、国土交通省による気候データの統計を用いて、ポリネーションサービスを評価することを目的とする。統計資料を用いることで、間接的ではあるが、多地点の、同時期のデータが得られ、一貫した条件でポリネーションサービスの評価を行う事ができると期待される。作物の単位面積あたりの収量を目的変数とし、気候条件(年平均気温、夏期の降水量、降雪量)、地形条件(土地起伏度)、作付面積に加えて、地域の土地利用(ポリネータの生息環境を想定、森林面積、人工林面積、里山指数)、を説明変数として加法モデルによる解析を行った。

全体的な傾向として、作物の種類や栽培方法によって、それぞれの気候条件に対する依存性のほか、さまざまな土地利用と作物の単位面積あたりの収量の関係が見られた。単位面積当たりの収量は、多くの作物で森林面積が負の効果をもっていたが、里山指数は正の効果を持っていた。また、施設栽培の作物と露地栽培のものなどでも土地利用に対する依存性に違いが見られた。今後の検証が必要ではあるが、森林はポリネーションサービスだけでなく、生産性を減少させる害虫などの生息地となる効果も持ち合わせている可能性がある。同時に、里山指数に代表されるような土地利用の多様性が、ポリネーションや、病害虫を抑制する効果などによって、作物の収量を挙げる可能性がある。


日本生態学会