| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-159 (Poster presentation)
虫媒花植物における花形質は、それぞれの種の送粉者に適応して進化してきたと考えられ、その植物の送粉者を予測するのに利用されてきた(例:送粉シンドローム)。一方で、特定の植物に訪花する送粉者相は、生育地の昆虫相や植物相にも影響を受けると考えられる。これまで、対象植物の花形質とその場の昆虫・植物相のいずれが送粉昆虫相決定に強く影響しているかについては十分に研究がされていない。ここでは、「送粉者相の決定要因としての花形質の頑健性」や「送粉者相により強く影響を与える花形質」を明らかにすることを目的に研究を行った。
本研究では、立山高山帯の送粉系のデータを用いて、複数の花形質を対象に、どの送粉者機能群の訪花を促進、また制限しているのかを明らかにし、個々の植物の花形質から送粉者相の予測を行った。さらに、花形質のみの予測力と昆虫相や植物相を考慮した予測力とを比較し、花形質が予測力にどの程度影響を与えるのか検証を行った。
調査は2010年と2011年に立山高山帯で行い、開花している植物(69種)に訪花した昆虫を機能群(マルハナバチ、カリバチ、ハナアブ等)に分けて記録した。今回は、花形質として、花蜜の露出の有無、花粉の露出の有無、花向き、花序タイプ(集合or独立)、花弁色の5項目を用いた。
これらのデータを用いて、送粉者機能群ごとに応答変数に訪花数、説明変数に全ての花形質、植物・昆虫のアバンダンスを組み込んだ訪花数予測フルモデルを作成した。フルモデルの予測力と各説明変数を抜いたモデルの予測力を比較する(モデル選択を行う)ことで、送粉者相決定における花形質の頑健性や各花形質の相対的な重要性について検討を行った。