| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-160 (Poster presentation)
植物-送粉者の送粉相互作用は盗蜜者や競争者など第三者の影響を受けていることが明らかになってきている。たとえば、盜蜜者による送粉者への植物報酬(花蜜)の低下が送粉者の訪花行動を変化させ、植物の適応度にも影響を与えることが示されている。しかし、盜蜜者がもたらす報酬の低下や送粉者の訪花行動の変化を定量的に記載した研究は限られている。本研究ではオオバギボウシの花冠に生息するアザミウマが盗蜜者として機能していることに注目し、アザミウマの盜蜜が花蜜量をどの程度減らすのか、また、アザミウマの盜蜜によって送粉者であるマルハナバチの訪花行動がどのように変化するかを調べた。事前調査から、自然条件下でアザミウマのいる株の一花内のアザミウマ個体数は平均19個体であった。花蜜をキャピラリーで除去したオオバギボウシの花冠に0-21個体のアザミウマを入れて袋がけを行い、4時間後の花蜜回復量を測定した。その結果、花内のアザミウマ個体数が増加するほど花蜜回復量は低下し、自然条件下に対応する一花内アザミウマ個体数(19個体)での蜜回復量は0.04μlであった。つまりアザミウマに盜蜜された株の花蜜量は低く、無報酬の状態に近いと考えられる。そこで、接着剤で花序内の花全ての蜜腺を覆ってアザミウマによる盗蜜を模擬した無報酬株を作り、蜜腺を覆っていない報酬株と比較してマルハナバチの花序内訪花行動がどのように変化するのかを調査した。マルハナバチは無報酬株を訪花すると、花序内での総訪花回数が減少した。花序内での総訪花回数の減少は訪花数と再訪花数の減少につながっていた。これらの結果から、アザミウマの盜蜜によって、オオバギボウシにおける隣花受粉と同花受粉の生じる確率が低下する可能性があると考えられた。