| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-161 (Poster presentation)
高山帯において花粉媒介を行う昆虫種群は限られ、大型のハナバチであるマルハナバチ類と小型のハエやハナアブなどのハエ目昆虫が卓越し、それぞれが多くの種に訪花することが報告されている。これまでの高山送粉系の研究では、マルハナバチ類とハエ類が訪花する植物では花形態や開花フェノロジーに差がみられることが明らかにされている。しかし、実際にそれぞれの昆虫種群によってどの程度の送受粉が行われているかについて群集レベルで研究された例は少ない。そこで、本研究では開花終了後の柱頭付着花粉に着目し、植物各種について訪花昆虫相データと柱頭付着花粉種相を調査し、マルハナバチ類とハエ類がそれぞれ自種花粉をどの程度媒介しているかを明らかにすることを目的とした。
本研究は2011と2012年の8月中旬に中部山岳国立公園内の立山周辺で調査を行った。調査地に自生する35種の植物の柱頭を各20個ずつ採取し、それぞれの柱頭に付着している花粉種を同定・計数した。また、各種についてつぼみを5個ずつ採取し、花粉・胚珠数を計数した。また2011年に、それぞれの植物種について訪花昆虫相を調査した。
その結果、柱頭に付着する自種花粉の割合は昆虫群間で差がなく、訪花昆虫数に依存していることが明らかになった。それぞれの植物の自種花粉率は44.5~94.7%であった。これまでマルハナバチ類などの大型のハナバチは送粉効率が良いとされてきたが、ハナアブやその他のハエ目の送粉効率と差がなく、互いに十分な送粉能力を有していると考えられる。
発表では2年間分の柱頭付着花粉の種組成のデータも用いて議論する。