| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-162 (Poster presentation)
被子植物における爆発的とも言える花の多様化は、植物と特定の動物の生物間相互作用(共進化)の産物であると考えられており、特定の送粉者とそれを利用する植物の相互作用は、植物の多様化の歴史で 平行的に成立している。同じ送粉者を利用する植物は、分類群が異なっていても共通した表現形質群を持つことが知られ、この現象は、「送粉シンドローム」と呼ばれている。送粉シンドロームの中でもスズメガ媒花は、送粉効率の高い夜行性のスズメガに適応しており、夕咲き、長い花筒、甘い芳香、淡い色の花色といった形質群を持つ。本研究で対象とするオシロイバナはメキシコ原産の多年生植物で、スズメガ媒花特有の形質群を備えており、実際にスズメガによって送粉されることが報告されている。ところが、オシロイバナでは、スズメガ媒花では通常見られない赤紫色の花が集団中に高い頻度で見られる。夜行性のスズメガを誘引する際、赤紫色の花は発見されにくく不利であると考えられるが、オシロイバナがどのようなメカニズムで集団中に白色・赤紫色・黄色 という多様な花色を維持してきたのかは分かっていない。そこで本研究では、送粉者の誘引への貢献度が花色ごとに異なるという作業仮説を検証することを目的とした。白花・赤紫花・黄花株を同数ずつ、格子状に配置した実験区で観察を行ったところ、オシロイバナには夜行性のスズメガだけではなく、昼行性のスズメガも訪花することが分かった。昼行性のスズメガは花色に関係なくランダムに訪花していた一方で、大多数の夜行性のスズメガは白色や黄色の花を選択的に訪花していた。しかし、一部の夜行性のスズメガは、赤紫色の花を連続して訪花していたことから、赤紫色の花も夜行性のスズメガの誘引に貢献している可能性が示唆された。今後、未学習のスズメガを用いた実験等で、更なる検証を行いたいと考えている。