| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-184 (Poster presentation)

メタゲノム解析による熱帯多雨林の葉圏菌類多様性の解明

*伊津野彩子, 山崎理正 (京大院・農), 田辺晶史, 東樹宏和 (京大院・地球環境), Sapto Indrioko (Gadjah Mada Univ.), 井鷺裕司 (京大院・農)

葉圏菌類は陸上植物に遍在するが、その種多様性や宿主植物との親和性、宿主植物への機能的影響は未解明である。本研究では、東南アジア熱帯多雨林における葉圏菌類の多様性及び菌類群集の宿主植物種間差異を明らかにするために、当地域で生態的・経済的に重要な樹種であるShorea leprosula (フタバガキ科) と同所的に生育する他の植物種を対象にメタゲノム解析を行った。

インドネシアの林業会社PT. Sari Bumi Kusumaが管理するフタバガキ樹木の植栽林分の一部 (4 km2の範囲) において、隣接して生育するS. leprosula 8個体と、同所的に生育する他の植物約5個体から成る調査プロットを4箇所設置した。植物1個体あたり葉10枚から抽出したDNAについて葉圏菌類に由来するITS1領域をPCR増幅し、次世代シーケンサーIon PGMを用いて塩基配列解読を行った。

得られた6,052,286配列 (平均長208bp) はソフトウェアClaidentを用いてフィルタリングを行い、708,056配列を統計解析に用いた。これらの塩基配列は97%の配列類似度で5,896個のOTUとして認識されたが10%が種同定されたにすぎず、熱帯多雨林の葉圏菌類における未知の多様性が示唆された。また植物個体ごとの葉圏菌類OTU多様度に植物種間差異は見られなかった一方で、葉圏菌類OTU組成は植物種間で有意に異なっており、植物種ごとに異なる葉圏菌類との相互作用が存在する可能性がある。S. leprosulaに特異的な葉圏菌類の特定や、葉圏菌類の系統的多様性に見られる宿主植物種間差異についても考察する予定である。


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