| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-185 (Poster presentation)
二次遷移の速度や遷移段階に関する情報は、植生管理にとって不可欠である。二次遷移の研究では種組成の変化に注目することが多い。しかし、気候やフロラが異なると、出現する種も変わり、種組成だけから遷移段階を判断することは難しい。遷移は、生活史戦略を異にする種が交代することによって進行する。そこで、生活史戦略に関係する形質(葉重/葉面積比、葉面積、材密度、など)を指数に使うことで、遷移の進行度をフロラに関係なく評価できると考えた。また、森林の遷移では、植生回復に伴う階層構造の発達が光環境の不均一性を増大させニッチ分割を促し、多様な形質をもつ種があらわれる可能性がある。しかし、これまでの研究では階層構造発達の影響は十分に考慮されていない。
そこで本研究では、伐採放棄後の植生回復を、階層構造の発達を考慮して、機能的形質の面から評価することを試みた。和歌山県有田川町の皆伐後の8年から約100年の二次遷移系列に、経過年数が異なる8サイト(20*20m)を設置し、そこに出現する総計63種の樹木の形質を測定した。各種3個体を選び、樹冠の上部から葉を採集し、葉面積や葉重量を調べた。また、幹から5cmのコアを採集し、材密度を求めた。それらの値を用いて、各種のバイオマスで重み付けしたサイトあたりの形質値(群集平均値)を算出し、その経時変化を調べた。また、階層構造発達に伴ってニッチ分割が進む可能性を検証するため、各形質の群集内でのばらつき(機能的多様性)を求め、その経時変化も調べた。
葉重/葉面積比では、群集平均値は放棄後年数と共に上昇し、機能的多様性は放棄後年数と共に増大した。前者は遷移に伴い方向性をもって群集構造が変化することを反映し、後者はニッチ分割を反映した結果だと思われる。本研究では他の形質の群集平均値や多様性の解析結果も含め、伐採放棄後の植生回復について考察する。