| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-188 (Poster presentation)

ハゼ類・カニ類からみた球磨川河口域の生物多様性 -分類群によって重要な環境は異なるのか-

*小山彰彦(九州大院農),乾隆帝(徳島大院工),立道大伸(九州大院工),鬼倉徳雄(九州大院農)

ハゼ類とカニ類から見た球磨川河口域の生物多様性

-分類群によって重要な環境は異なるのか-

小山彰彦(九大院農),乾隆帝(徳島大院工),立道大伸(九大院工),鬼倉徳雄(九大院農)

河口域は生物生産性が高く、多くの魚類、無脊椎動物や鳥類などの生息場として非常に重要な役割を担っている。しかしながら、同時に河口域は埋め立てや浚渫といった人為的な開発が活発に行われる地域でもあり、それに伴い河口域に生息する多くの生物は絶滅の危機に瀕している。これらのことから、河口域生態系の保全・再生・管理を実行するための知見の集積は急務である。

河口域に生息する生物の中でもハゼ類、カニ類は塩分変動の激しい汽水環境である河口域に定住すること、さらに多様な生息場所にそれぞれの種が適応放散していることから、環境指標生物としての役割が期待されている。しかしながら、多様な環境を持つ河口域においては、1つの分類群では評価できないハビタットが存在する場合や、分類群によって重要な環境に差異がみられる場合も考えられるため、単一の分類群で生態系評価を行うのはリスクが高い。そこで、本研究ではハゼ類、カニ類の両分類群にとって重要な環境の差異を明らかにすることを目的に、日本有数の汽水性ハゼ類、カニ類の種多様性を持つ球磨川水系の河口域において両分類群の出現パタンと物理環境特性の関係性を調べた。調査地点は、汽水域上端から前浜干潟にかけての約6.5km区間において河川縦断方向に15カ所の調査ラインを設け、さらに各調査ライン上で地盤高に基づき河川横断方向へ数箇所設置し、各地点において、物理環境計測および一定区画内の生物相調査をおこなった。解析の結果、カニ類とハゼ類にとっての重要な環境は異なることが示唆され、特に地盤高におけるその違いは顕著であった。


日本生態学会