| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-190 (Poster presentation)

甲府盆地に分布するシダ植物種構成とその分布様式

*松浦亮介(信州大院・理工), 佐藤利幸(信州大・理)

植物種の分布と地点ごとの種構成はその環境により特徴づけられ、特に極端な気候条件は植物の地理的分布を制限すると考えられている。植物の中で、シダ植物は胞子分散の際一切動物の介助がないことから動物と関連した共進化をほとんど行ってこなかった種群と考えられている。そのため顕花植物と比べてより非生物的条件がその分布に関与していると考えられている。またシダ植物は多くの残存・固有分類群を持つ種群のため生物地理学、保全生物学を考える上で重要な植物群であるといえる。

倉田・中池により日本国内のシダ植物種水平分布がまとめられており、中部地方で種数が極端に少ない地点のほとんどが海岸であったが、一部内陸にも存在した。種数が少ない地点は極端な環境条件下にあり、多くの種の侵入・定着を阻害している原因を特定しやすいのではないかと考えられる。内陸性の種数が少ない地点では、シダ植物の分布に対し非生物的要因である気候がどのように関わっているか、本研究の調査で確認された115種のシダ植物と9つの気候要因に基づき明らかにする。

本研究の目的として、以下の3つを上げる;(a)どのような気候要因がシダ植物種の分布と組成に影響するか評価;(b)多変量解析によって類型化した気候区分ごとにどのような種が特異的に分布しているか選別;(c) (b)で選別した種群が盆地内でどのような分布を見せるか、また種数が少ない地点に存在している種群の決定からシダ植物の侵入・定着を阻害する要因が何かを探っていく。

解析の結果、甲府盆地において地点ごとの種数を制限する要因は高温と冬季の乾燥であった。高温・冬季乾燥域の内、種数が少ない地点に特異的に存在していた種はスギナ、イノモトソウ、イヌドクサであった。これらの種は主に甲府盆地の中でも水はけのいい河川の周囲の地点に多く存在し、乾燥がシダの定着を阻害することが示唆された。


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