| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-191 (Poster presentation)
護岸や護床などの人工構造物は、水生生物の個体群および種構成に影響を及ぼし、河川生態系の劣化を引き起こしている。河川生態系を効率的に保全するためには、河川生態系の現状を評価し、どこを優先的に保全すべきかを検討する必要がある。
これまでの生態系評価では、希少性や固有性、上位性など様々な指標が用いられてきた。その生態系における典型的な種を指標とする「典型性」評価は、大きく劣化した生態系の中で最低限保全すべき環境を抽出することができる。生態系の現状を把握し保全計画を立てるには、複数の指標から生態系を評価する必要があるが、これまで国内における河川生態系の評価において典型性評価は行われていない。以上の理由から本研究は、河川生態系の保全のために魚類を対象に、1) 河川生態系の典型性評価を行うこと、また2) 典型性の観点による生態系の劣化度合いと人工構造物との関係を明らかにすることを目的とした。
本研究は、北海道十勝川流域内の計80リーチ(1次河川:20、2次河川:23、3次河川:14、4次河川:14、5次河川:5、6次河川:6)で魚類相と構造物調査を行った。各調査地点の評価は、RIVPACS方式を応用して行った。RIVPACSは、各調査地点で得られた種組成を用いて、本来出現すべき種組成に対する実際の種組成の乖離度(O/E value)により各調査地点を評価する手法である。尚、今回用いた手法では、典型種が存在する地点ほど、地点のO/E valueは高くなるように種毎に重みづけをして計算している。
解析の結果、各調査地点のO/E valueに対し、護岸率による負の効果が認められた。また、各次数間のO/E valueの値には差があり、1〜3次の低次数河川と比較して、4〜6次の高次数河川の方が高いO/E valueを示した。これらの結果に基づき、河川生態系の保全計画について議論する。