| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-192 (Poster presentation)
ネジレバネとは甲虫に近縁なネジレバネ目の完全変態昆虫である。ネジレバネ目は全種が昆虫寄生性であり、原始的な捕食寄生性のグループを除いて宿主を殺さない昆虫の内部寄生者である。オスの成虫は目や翅がありメスを探して交尾する自由生活である。一方、メスは終生寄生性であり目や触角などの感覚器、翅や脚などの運動器官を欠き、成虫になっても頭部のみを寄主の体外に出すだけである。メスは宿主の体外に出した頭部にある育溝と呼ばれる穴を通じてオスとの交尾、体内で孵化した幼虫の放出を行う。ネジレバネはメスから放出された微小な一齢幼虫が自力で移動分散を行い、宿主を探し寄生する。ネジレバネのみならず、このような分散様式を持った昆虫において宿主との関係や多様化についての知見は少ない。その理由として、多様化しているグループや宿主と寄生者の関係が充分に解明されているグループが少ないことが挙げられる。ネジレバネでは、膜翅目に寄生するグループが多様化していることが知られている。そこで本研究では、ネジレバネの中で最も多様化しており宿主の情報も揃っているグループであるハナバチネジレバネについて、日本産種を中心に、ヒメハナバチに寄生するStylops属のネジレバネとコハナバチに寄生するHalictoxenos属とEustylops属のネジレバネ、計21種を用いて分子系統解析を行った。ハチを宿主とするネジレバネのグループでは一齢幼虫は便乗に特化した形態を持っている。花の上で放出された一齢幼虫が別のハチに便乗して巣まで運ばれ、ハチの卵や幼虫に寄生すると考えられている。花を介した便乗によって発生する宿主転換や多様化が起きている可能性についても考察を行った。