| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-199 (Poster presentation)

奈良県内のため池を利用する鳥類群集の解析

*桑原 崇, 桜谷保之 (近畿大・農)

ため池は水田の灌漑用水を確保する利水施設として人工的な水域であり、少雨で天然湖沼の少ない西日本の瀬戸内地域や近畿地方の中部などで多数造られ、重要な止水環境となっている。また、ため池は、灌漑や池干しなどの人為的攪乱を受けながら長い年月をかけて抽水植物群落やヤナギなどの池畔林を形成させることにより、多様な生物が生息場所や採餌地として利用する環境になった。その中でも鳥類にとってため池とは、水鳥の生息地や繁殖地である他に、ヨシ帯を利用する鳥の繁殖地やねぐら、羽毛の汚れや寄生虫などを落とすための水浴び場、様々な鳥の採餌地など水鳥だけでなく、山野の鳥にも重要な生息地となっている。

本研究は、ため池を人工的に造成されたものに限らず、自然起源であっても人為的な改変がなされている池と定義し、ため池を構成する環境要素や周辺環境に着目し、ため池による鳥類群集の違いとその要因を解明することを目的とした。

調査は奈良県北西部に位置する4地点12ヶ所のため池で行った。調査時期は2011年10月から2012年12月に月に1~2回の頻度で、朝に実施した。調査方法は基本的に15分間の全体を見渡せる位置での定点調査および池の周回路のルートセンサスを行い、周回路より内側で確認された鳥類の種とその個体数、行動、利用環境を記録した。

調査の結果、全体で14目31科65種の鳥類を記録した。それぞれのため池を利用する鳥類の種数と個体数は調査地の面積、池の周囲長に占めるヨシ帯の割合との間に正の相関があり、池と接している樹林地の長さとの間には負の相関が認められた。この他、調査地ごとの種多様度指数H’ や各調査地間の重複度Cπによる解析を行い、利用タイプや渡りによる分類、食性、周辺環境などの面から鳥類の群集構造について考察する。


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