| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-200 (Poster presentation)
山地上流域における森林間伐と降雨流出の複合的攪乱が底生生物群集に与える影響の評価を行った。本研究は、栃木県佐野市にある東京農工大学FM唐沢山内に位置する3流域(K2、K3、KR)を対象とした。植生は20~50年生のスギ・ヒノキの人工林であり、K2では2011年6~10月に50%列状間伐施業が行われた。間伐と同期間の2011年7月に最大日雨量177.6mmの降雨流出イベント(回帰年:35年)が発生した。3流域について、2011年5、8、12月、2012年3、5、7月に瀬と淵のそれぞれ3箇所(25×25cmコドラート)で底生生物を採集した。降雨流出イベント後の2011年8月では、全ての流域において同年5月と比べて全個体数は53~90%減少していた。2012年5月と7月を比較しても同様の減少は見られなかったことから、降雨イベントによる攪乱の影響が考えられた。優占種別では、ユスリカ科、コカゲロウ属、オニヤンマの個体数が間伐以降の期間にK2で増加していた。ユスリカ科は2011年12月と2012年3月においてK2の平均個体数密度は他流域の4~24倍であった。さらに、K2における瀬のコカゲロウ属と淵のオニヤンマの平均個体数密度は,2012年3月から他流域と比較して増加し、コカゲロウ属では10~58倍、オニヤンマでは4~34倍となった。間伐後のK2では樹冠開空度の増加によって日射量が増加するとともに、作業道などからの細粒土砂流入と河床堆積が確認された。間伐後の底生生物群集の応答から、攪乱後の初期段階では砂泥質を選好しかつ1世代の期間が短いユスリカ科が増加し、春季以降は、日射量の増加により藻類食者であるコカゲロウ属が増加したと考えられた。一方、淵では砂泥の堆積によって、砂泥を好むユスリカ科とオニヤンマが増加したと考えられた。