| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-203 (Poster presentation)
近年,農業形態の変化や基盤整備に伴い,水田地域をハビタットとしてきた生物種が減少,絶滅していること明らかになってきており,生物群集構造と環境要因との関係を解明することが保全を考える上での課題となっている.本研究では,立地環境が異なる水田地域において,水田生態系における代表的な昆虫群である直翅目の群集構造と環境要因との関係を解明し,保全策について検討することを目的とした.
調査は2011年9月から11月にかけて,長野県上伊那郡の立地環境や整備状況が異なる5箇所の水田地域(A:市街地・未整備,B:市街地・整備,CおよびD:中山間地・未整備,E:中山間地・整備)毎に設定した500m径円内を対象として行った.調査箇所は円内の4つの草地形態(畦畔法面,畦畔斜面,空地,林縁)から選定し,形態毎に5箇所ずつ, 1地域につき20プロットの1m方形区を設置した.
直翅目群集の調査はプロット毎に目視法とスウィーピング法,踏み出し法およびトラップを用いて実施した.同時に各プロットについて植生,土壌含水率等の局所的環境要因の調査を行った.また,景観的環境要因として範囲内の土地利用調査および管理状況についての聞き取り調査を行った.
その結果,総出現種数は16種で,総出現個体数は493個体であった.各調査地における出現種数と個体数はAで9種127個体,Bで9種48個体,Cで10種92個体,Dで13種148個体,Eで16種493個体をそれぞれ記録した.出現種数は中山間地,出現個体数は未整備地域で多い傾向があった.TWINSPANによる種群分類の結果からは,草地形態の違いよりも地域性が強く影響していることが示唆された.発表ではこうした群集構造と,局所および景観的環境要因との関連性について,既往の研究結果との相違も含めながら考察する.