| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-204 (Poster presentation)
水の溜まった樹洞は水生生物の生息地であり、分断された水域としてパッチ状に分布する。樹洞のサイズや堆積リター量など、様々な樹洞内部の要因が、生物群集の構成に差異を生じさせることが明らかにされている。さらに樹洞の形状も、枯死有機物や降雨など外部からの資源の入りやすさなどに影響し、群集構造を決定する一要因となっている可能性がある。そこで本研究では、樹洞の開口面積の違いに注目し、外部からの資源混入の頻度や水の蒸発量などが水生生物群集におよぼす影響を調査した。
調査は栃木県佐野市の広葉樹二次林において、2012年の5月から11月にかけて行った。 容量が同じで 底面積と高さが異なる2タイプのプラスチック製容器を各12個、約2ヶ月間隔で3回にわたって調査区内のコナラ成木に設置し、その内容物を回収した。採取したサンプル内の水生生物を目視によって形態種で区分した。
本調査の結果、2タイプの容器間で出現した水生生物の総分類群数に有意差はみられなかったが、その総個体数は、時期によって広く浅い容器において多くなる傾向を示した。カ科のなかでは、一方の容器において個体数が多くなる種も複数みられた。どちらのタイプの容器に個体数が多いかはカの種類によって異なっており、生息地の選好性の差異やすみわけが存在すると考えられた。また、両タイプの容器で生物の個体数が平均から突出するサンプルがみられ、個々の生息地間で群集構造の違いが大きいことが示された。