| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-215 (Poster presentation)
ムクドリSturnus cineraceusは繁殖を終えると集団塒を形成し、この塒は市街地にも形成され、夕刻おびただしい数のムクドリが塒に集合する様子はマスコミに取り上げられることもある。塒の周辺では鳴き声による騒音や糞の悪臭に対して苦情が発生する。街路樹の剪定やネット掛け、忌避音、超音波などによる対策が行われているが、根本的な解決には至っていない。
本研究ではムクドリの集団塒の形成過程や場所、その意義について考察する。2012年6月から11月まで奈良市新大宮駅周辺を中心に調査を行い、樹木や電線に集まる個体数の計測、飛来時刻などについて記録した。さらに塒周辺の花壇において植生を調査し、ムクドリによる種子散布の効果について検討した。
その結果、6月下旬から塒の形成が始まり、11月中旬まで継続した。個体数は8月上旬にピークに達し、5895羽を記録した。塒入りは日没前後に認められ、日没時刻に伴って変化していた。本調査地では街路樹よりも電線を好んで利用する傾向がみられた。塒直下の花壇では10種119個体の植物を確認し、エノキの個体数が最多であった。塒以外の花壇では8種33個体の植物を確認した。
本調査地では街路樹の剪定や超音波を用いた定期的な駆除が行われていた。個体数変化、塒位置の変化と駆除の関係についても検討する。
都市に出現する猛禽類が本種に与える影響や、都市環境に生息するムクドリと人間との関わりのあり方についても議論を深めたい。