| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-219 (Poster presentation)

多摩川支流三沢川源流部におけるトンボの分布と生息環境要因の対応関係

岩田隆典(明大・農)

トンボは、幼虫期をヤゴとして水中で過ごし、選好する水環境により止水性の種と流水性の種に大きく分けられる。トンボの分布を規定する生息環境要因に関する既存研究は、トンボの多くは止水性の種であるため、止水環境を対象としたものが多い。一方で、流水環境、特に谷戸の源流部のような小規模な河川を対象とした研究は少ない。そこで本研究では、谷戸源流部の小河川を対象に、トンボの成虫と幼虫の分布と、生息環境要因の調査を行い、これらの関係性を考察する。

調査は、神奈川県川崎市麻生区黒川の明治大学黒川農場内の自然生態園および本農場の北部に隣接する谷戸で行った。自然生態園には小河川が1本流れる。北部谷戸には、谷頭から右岸側、左岸側に小川が2本流れ、多摩川支流の三沢川に流入する。両調査地は、直線距離で約300m離れている。成虫捕獲調査は、2012年9月および11月にそれぞれの調査地で各月1回ずつ7時間小河川に沿って歩くルートセンサスにより種と個体数を記録した。幼虫捕獲調査と水質調査は、自然生態園、北部谷戸の小河川3本で行った。幼虫調査は、タモ網を用い、河床の沈殿物や抽水植物の根本をすくい取り、捕獲した幼虫の種と個体数を記録した。水質調査は、水温、DO、pH、COD、アンモニア態窒素の5項目の測定を行った。

調査の結果、成虫の種数および個体数は自然生態園で多く、13種、77個体であった。幼虫の種数は、北部谷戸の左岸で多く、5種が記録された。どちらの調査地内においても、トンボの分布には種ごとに特徴があり、それぞれの種の生息地選択に対応して分布している可能性がある。水質の5項目については、調査地間および小河川ごとに大きな違いは見られなかった。

本発表では、調査地ごとの種組成や個体数、多様度指数を、環境要因と比較し考察を行う予定である。


日本生態学会