| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-220 (Poster presentation)
シカの問題を抱える多くの地域では,シカの生態系被害対策として、防鹿柵の設置が進められている.しかし,シカがすでに高密度で生息している地域に防鹿柵を設置した場合,柵内に再生する植生は高密度化する以前とは異なることが報告されている.そのため,植生と密接な関係を持つ鳥類群集も同様に,柵内に成立する群集とシカが高密度化する以前に成立していた群集が異なることが推察される.そこで本研究では,防鹿柵内に成立する鳥類群集の特徴を明らかにするため,栃木県奥日光地域のシカ低密度地域(光徳)および,シカ高密度地域(外山沢),防鹿柵内(高山北麓;防鹿柵設置後8年目)の各地域のミズナラ林に8地点ずつ調査プロットを設置し,プロットセンサス法による鳥類調査をおこなった.そして,これらの地域の鳥類群集組成と,防鹿柵設置後1年目に柵内のミズナラ林で調査されたデータおよびシカが増加する以前の本調査地域のミズナラ林で調査されたデータとを比較し,防鹿柵内に成立している鳥類群集の種組成の特徴について検討した.なお,防鹿柵が設置された高山北麓は,防鹿柵が設置される以前,シカが高密度で分布していたことが報告されている.その結果,本調査地の防鹿柵内に成立している鳥類群集の種組成は,シカが増加する以前の鳥類群集の種組成とは大きく異なっており,防鹿柵の設置は鳥類群集の回復に寄与していない可能性が示唆された.