| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-221 (Poster presentation)

東北地方太平洋沖地震後の岩礁潮間帯生物群集:帯状分布の時空間パターン

*岩崎藍子, 飯田光穂, 萩野友聡, 阪口勝行, 佐原良祐, 野田隆史

2011年3月に発生した東北地方太平洋沖地震は大規模な津波と沈降を伴った。これらによる物理的インパクト・環境の変化は直接的・間接的および短期的、中・長期的に沿岸生物群集に影響を及ぼすものと考えられる。しかしながら地震から2年半が経過した今も、地震後の遷移に関する定量的な知見はまだほとんどない。

岩礁潮間帯では、垂直方向の環境勾配に沿って優占種が帯状に変化する帯状分布が一般的にみられる。そこで本研究は岩礁潮間帯生物群集を対象に地震直後(4か月後)と16か月後の帯状分布パターンの変化とその要因を明らかにすることを目的とした。

調査は2011年7月および2012年7月に岩手県において5海岸23岩礁で行った。各岩礁では平均潮位をまたいで縦175㎝、横50cmを縦25cmごとに7潮位に分割し、各潮位で固着生物の被度と移動性ベントスの個体数を計数した。固着生物は6つの機能群(a.単年藻、b.皮相のある大型植物、c.固着性植物、d.フジツボ類、e.イガイ類、f.多毛類)に分けた。帯状分布の変化プロセスを推定するために、各潮位における2011年と2012年の各群の被度の変化を従属変数に高さ、捕食者、2011年時の被度、2011年時の裸地、高さと捕食者を独立変数に重回帰分析を行った。

各群の帯状分布パターンの変化にはc群、f群で沈下後の潮位で減少し元の潮位で増加、c群、d群、e群で沈下後の潮位と元の潮位の両方で増加の傾向がみられた。a群には潮位に伴う一定の傾向が見られなかった。重回帰分析の結果、e群を除くすべての群で2011年時の被度による負の影響が見られ、高さによる正の影響もb,d,f群に有意にみられた。これらの結果から一部の機能群では帯状分布パターンに元の潮位に向かって移行する傾向が見られる一方でその変化パターンとその要因には機能群間で違いがあった。


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