| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-363 (Poster presentation)
長野県野辺山高原では湿地や草原が点在し,絶滅危惧Ⅰ類に指定されているアサマフウロや準絶滅危惧のサクラソウ等の希少草本植物が自生するが,近年,要注意外来植物に指定されているハルザキヤマガラシ等の外来植物の侵入・定着が問題となっており,ことが指摘されている(宮原ら,2010)。今後,外来植物の希少草本群落へ負の影響が懸念されるが,これらについての詳細な分布の現状は明らかにされておらず,希少群落の特性や生育立地環境条件の把握も十分には行われていない。
そこで本研究では,2012年の春から秋季にかけて信州大学農学部野辺山AFCステーション内において,希少草本群落と外来植物群落双方の分布状況及び環境条件を解明する目的で,アサマフウロとサクラソウ、および外来植物5種の分布地点を,現地踏査をしながら記録した。また,調査地内の複数地点において,アサマフウロ群落の特性および外来植物の影響を把握するために,植物社会学的植生調査を実施した。
その結果,各種の分布は周囲の土地利用による影響を大きく受けており,生育地の条件は各々異なるというということが明らかとなった。しかし同時に,アサマフウロはハルザキヤマガラシやメマツヨイグサといった外来植物と生育地が重複する割合が高いという結果も得られ,これらの外来植物は要求する立地環境条件がアサマフウロと類似している可能性が高いと考えられた。植生調査においても,分布調査の結果とほぼ同じ傾向がみられた。また,野辺山AFCステーションにおけるアサマフウロ群落は,ミヤコザサやススキといった在来植物群落に加えて,採草地から逸出したカモガヤ等の外来牧草群落においても形成されているということも明らかとなり,これらの種との間に生育地をめぐる競合関係にある可能性は十分考えられた。