| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-368 (Poster presentation)
新たな環境に導入された外来種は、原産地では見られない生活史特性を示すことがある。沖縄島倉敷ダムにおいて特定外来生物オオクチバスの生活史特性を調べたところ、特異な成長パターンが観察されたので報告する。
2009年10月~2012年6月に採集した1,560個体の年齢を査定し,年齢と標準体長(SL)の関係を詳細に解析した。その結果,倉敷ダムのオオクチバスの成長様式は大きく2パターンに分けられた。多くの個体が2歳以降,約200 mm SLで成長が停滞し,5歳までに死亡する一方,少数の個体では,最大で466 mm SLまで成長を続け,最長12歳まで生存することが分かった。
1,475個体の胃内容物を解析した結果,倉敷ダムのオオクチバスは,魚類を主に捕食しており,特に小型のハゼ科(主にゴクラクハゼ)およびサンフィッシュ科(オオクチバス,ブルーギル)の魚類が重要な餌料となっていることが分かった。これらの魚類の重要性は,成長に伴い変化し,いずれの年齢群においても200 mm SLを境に主要な餌生物がハゼ科からサンフィッシュ科へと変化した。
成長が停滞するサイズと餌生物が変化するサイズ(200 mm SL)が一致したことから,倉敷ダムで観察された特異な成長パターンは,餌料環境と密接な関連があると思われる.一般的に,大型のオオクチバスは,大型甲殻類や小~中型の魚類(~150 mm)を捕食するが,倉敷ダムでは,大型の甲殻類がほとんど生息しておらず,小~中型の魚類も少ない.すなわち,倉敷ダムでは,200 mm SLより大型のオオクチバスにとって適切なサイズの餌がサンフィッシュ科魚類しか存在しないため,十分な量のサンフィッシュ科魚類を摂餌できた一部の個体のみが大型・高齢になる一方,多くの個体は餌不足のため成長できず,短命で死亡すると考えられた.